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CLOSEUP セキュリティ組織 第4回

セキュリティ人材を採用と新規育成の両面で確保 – パーソルホールディングス グループIT本部(後編)

グループ規模が拡大を続ける中で、グループ社員の生産性とセキュリティの両立を意識しながら、日々、業務にあたっているパーソルホールディングス グループIT本部。後編にあたる本記事では、社会的にIT人材不足が叫ばれているなか、同社では採用や人材育成にどのように取り組んでいるのかを聞きました。

この記事のポイント


  • 中途採用者は、部署内外の社員と1on1が行える独自のメンター制度により、業務やキャリアへの多角的なアドバイスを受けることが可能に
  • 部門・グループ企業を横断したセキュリティ人材の募集・育成施策を展開
  • テクノロジー人材向けに新人事制度を策定。業績連動型の賞与査定を廃止、身につけたスキルが報酬に反映される仕組みに

パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部
持田 広志氏(情報セキュリティ部 部長)
会田 志津氏(セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室 室長)
宮下 海里氏(セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室)
井田 雅人氏(セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室)

新卒・中途それぞれにあった配属・研修・メンターの制度を用意

テクノロジー組織、セキュリティ組織が細分化され、各メンバーが得意分野に注力できる体制がとられていることは、前回伺いました。そうした体制を維持するための採用方法や配属までの流れを教えてください。

グループIT本部の組織構成
グループIT本部の組織構成

会田氏:
採用は新卒と中途の両方を行っています。グループIT本部では、新卒は毎年、IT職種という大きな枠で5~10人を採用しています。入社後3か月間の共通研修でインフラやセキュリティの基礎を学んでもらったあと、仮配属先でメンターが付き、実際の業務に近いOJTを実施します。仮配属期間中には他部署の業務紹介もあり、どの部署でどんな仕事をしているかも理解できるようになっています。そして6月中旬ごろに本人の希望を確認し、適性などの要素も鑑みて、7月に本配属という流れです。

パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室 室長 会田 志津氏
パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室 室長 会田 志津氏

各部門の業務内容がある程度わかった状態で、配属先の希望を出せるというのは安心ですね。宮下さん、井田さんは新卒入社とのことですが、仮配属から本配属になるまでで印象に残っていることはありますか。

井田氏:
私はいま6年目ですが、たまたま仮配属の翌日に大きな仕事が入ってきて、はじめから実務に近いところで働きました。当時は戸惑うこともありましたが、それによってセキュリティという仕事の重要さを実感できたので、いまはよかったと思っています。

宮下氏:
私は井田の1年前の入社で、新卒採用の一期生です。当時はホールディングスが立ち上がったばかりということもあり、受け入れ態勢が整っていない部分もありましたが、いまは全体研修の内容もしっかりと体系的に行われるようになっています。

井田氏:
毎年、新卒採用が行われるようになったことで、年齢の近い先輩がいるというのは、これから入社する新卒の方にとってよい点だと思います。たとえば3〜5年目の先輩を、近い将来の自分の姿のモデルにすることができますから。

中途採用について、採用後のオンボーディングはどのように行っているのでしょうか。

会田氏:
新卒と違い、中途の場合は採用の時点で職種が決まっているため、入社後は人事が研修を2日行い、3日目から配属先で受け入れます。配属後は一定期間、わからないことがあればすぐに質問できるよう、一人ひとりにメンターがつきます。

また、早く会社に慣れてもらうために、自部署での1on1のほか、希望すれば他部署の先輩や上司と1on1を行えるナナメンターという制度も設けています。

持田氏:
直属ではない「斜め」の関係にある部署の人をメンターにできる制度です。どの部署のどういう人をメンターにしたいかは、本人が希望を出せるようになっています。年齢や性別、業務内容が異なる人と交流してもらうことで、社内に人的ネットワークができますし、自分の業務について、あるいはこの先のキャリアについて、別の視点からのアドバイスを受けることもできます。

パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 情報セキュリティ部 部長 持田 広志氏
パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 情報セキュリティ部 部長 持田 広志氏

社内公募からセキュリティ人材を新規育成

直属以外の部署とのつながりも重視されているということですね。ナナメンターのほかにも、部門やグループを横断した人事施策、人材育成施策はあるのでしょうか。

会田氏:
グループでは以前から、キャリアチャレンジ制度という社内公募施策を実施しています。これはグループ各社が社内向けに募集するポジションに対して、グループ社員が自ら異動希望を出すことができる制度です。その職種が未経験であっても、意欲があれば誰でも応募できます。私も以前はグループ会社のパーソルテンプスタッフに在籍しており、取引先に常駐してWebアプリケーションの開発や、自社サイトのIT企画の仕事をしていましたが、キャリアチャレンジ制度を利用して、いまのセキュリティ部門の仕事に就きました。

持田氏:
さらに去年からは、セキュリティ分野に特化した人材育成の仕組みもスタートしました。グループ企業はどこもセキュリティ人材が足りていない状況で、これをホールディングスとして解決するための試みです。セキュリティ人材を目指したい人をグループ内で募って、未経験の状態から我々が半年ほどかけて育成し、その後、グループIT本部内のセキュリティ担当部門に配属します。昨年度は7人の応募があり、いまは情報セキュリティ部で仕事をしてもらっています。グループ会社のセキュリティを支援する、セキュリティの人材交流を行う等、各社への還元も行えればと考えています。

宮下氏:
また自分たちのキャリアのなかで培ってきた知識や経験を共有するグループ内勉強会も、しばしば開催しています。その一環として昨年度は「Capture The Flag」を実施しました。これは情報セキュリティに関わるスキルを用いて問題を解き、点数を競うコンテストで、目的は交流半分、スキル向上半分です。グループ内からITエンジニア、未経験者含め約100人の参加がありました。

さらに情報セキュリティ大学院大学のコースを受講して専門性を高める機会なども設けられていますし、そのほかグループ内外問わず、いろいろな人との接点を持つことができるようにもなっています。

パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室 宮下 海里氏
パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室 宮下 海里氏

個人の成長にフォーカスした評価手法を導入、社内副業も可能に

人事評価の基準はどのように設定されているのでしょうか。

持田氏:
スキルにあわせたグレードを定めています。新卒入社時は一番下のグレードから、中途入社の方はそれまでの経験をもとにグレードを決め、その後、実力にあわせてグレードアップ/ダウンします。専門スキルだけを評価するのではなく、社会人およびパーソルグループ社員としてどうか、目の前の業務を自分なりにどうブレイクダウンしてパーソルの組織理念の体現につなげているか……といったことも、評価の対象になっています。

井田氏:
さらに今年の4月からパーソルホールディングスのテクノロジー人材向けに、プロダクトエンジニア制度が設けられました。以前はエンジニアであっても業績連動型でボーナスを決めていましたがそれを廃止し、役割を明確化・明文化したうえで、エンジニアならエンジニアとしてのスキル、コンサルタントならコンサルタントとしてのスキルが評価対象となりました。また、自分自身が設定した目標に対する達成率も、評価に加味されます。こうした個人の市場価値や成長に着目した制度ができたことは、一人ひとりのモチベーションにもつながると思います。

パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室 井田 雅人氏
パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 セキュアアクセスインフラ部 セキュアネットワーク室 井田 雅人氏

パーソルホールディングスでの働き方や環境について、特徴的だと思われることがありましたら、お聞かせください。

宮下氏:
少し前から、業務に影響がなければフルリモートが可能となったため、、ワークライフバランスが一層とりやすくなりました。実際に、大阪や東北からリモートで勤務している人もいます。

会田氏:
まだトライアル運用中ではありますが、IT部門の社員を対象に、グループ各社からの仕事を個人的に受注できる副業制度も導入しています。IT人材が足りないグループ企業が、Web・ITコンサルティングやシステム開発、アプリ開発のような案件を提示し、それを副業として受注したい社員が応募することで、マッチングが成立すれば、業務委託契約の形で仕事にできるというものです。一定の時間内なら就労時間中にその副業をすることが許されており、個人的な収入増やスキルアップにも役立ちます。

テクノロジードリブンとセキュリティの両立を目指す

最後に、今後みなさんが担当部署で、あるいはパーソルホールディングスという組織のなかで取り組みたいことや展望をお聞かせください。

井田氏:
現在、パーソル全体でゼロトラストネットワークの構築に向けた各種機器のクラウド化を推進しています。そのなかで、クラウドプロキシ(PC=Webサーバー間の通信をセキュアにするシステム)を導入することでクラウド化を推進するとともに、ファイルのアップロードは制限するがサイトの閲覧は許可するといったような柔軟なフィルタリング機能を実装することでセキュリティレベルとユーザーの利便性の向上を実現したいと思います。

宮下氏:
サイバー攻撃が高度化・多様化するなか、ユーザー企業では対応しきれない攻撃や、予想だにしなかった攻撃も出てくるでしょう。社内の勉強会に限らず、社外の専門家との交流を深め、より高度なセキュリティを実現していきたいと思っています。

会田氏:
個人情報を扱うことが多いパーソルグループは、これまでもセキュリティやガバナンスの取組みに積極的でしたが、時代の変化や組織拡大などの背景もあり、まだまだセキュリティ人材が不足しています。これを緩和するために社内人材のリスキリングや人材育成に、さらに注力したいと考えています。

また、セキュリティに関わる部門は細分化してきている一方で、最近、横のつながりとして、グループIT本部内の有志メンバーで集まってセキュリティについて考えるコミュニティを始めています。こうした連携を行いながらお互いに知見を深めたり、グループ全体に共有して支援しあったり、組織運営に反映するなどして、グループの顧客価値創造に役立ちたいと思っています。

持田氏:
グループとしてはテクノロジーを重要視しているので、テクノロジーの事業活用を強化すると同時に、セキュリティがその足かせにならないように、という点は今後も意識していきます。

いま、まさにグループのIT環境については過渡期ですので、我々がテクノロジードリブンを実現するための環境を支えつつ、セキュリティとの両立を図れる組織にしていきたいです。そして将来的には、誰もがセキュリティ意識を持って仕事にあたる風土をつくっていければと思っています。

(取材・文:渡邊智則、写真:岩田伸久)

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