CLOSEUP セキュリティ組織 第8回
SOMPOホールディングス IT企画部(後編) – 採用はグループのパーパスと応募者の目標の合致を重視
高度な専門性を有するセキュリティ組織を持株会社に設け、グループ会社のセキュリティを担保しているSOMPOホールディングス株式会社。前編ではセキュリティ業務を担う各ユニットの役割や、グループ会社のサイバーリスクと対策状況を可視化するための独自の定量指標などについて聞きました。
後編では、専門性の高いセキュリティ人材を集め、働きやすい環境を整えるためにどのような工夫をしているのかを語っていただきました。
この記事のポイント
- セキュリティ領域では、SOMPOホールディングスで必要な人材を集中採用し、グループ各社に高度なサービスを提供している。採用のポイントはグループのパーパスと応募者の目標が合致していること
- グループ各社のIT・セキュリティ担当者の教育に力を入れ、SOMPOホールディングスのエンジニアによる「サイバーテックトーク」という研修を毎月開催
- グループ会社が顧客に提供するサイバーセキュリティ関連サービスに、CoE(※)が持つ専門性の高いノウハウを反映することからも、グループのパーパスを実現していく
※CoE:Center of Excellence。ここでは専門性が高い人材を、持株会社であるSOMPOホールディングスのセキュリティ組織に集める体制を指します。
SOMPOホールディングス株式会社 IT企画部
喜多村 直己氏(リスク&ガバナンスユニット リーダー)
岡田 博子氏(サイバー・コントロール・ユニット リーダー)
李 宏宇氏(サイバー・テック・ユニット リーダー)
堀米 賢司氏(プロダクティブ・ソリューション・ユニット リーダー)
採用では自社のパーパスと応募者の目標が合致しているかを重視
前回、SOMPOホールディングスのIT企画部に加えて、グループ各社にIT担当者、セキュリティ担当者がいると伺いましたが、採用は一括で行っているのでしょうか。
喜多村氏:
IT担当者とセキュリティ担当者は、グループ各社でも採用しています。ただし、セキュリティの領域については、いまの人材市場の状況を考えると専門性が高いIT人材をグループ各社が単独で集めるのは難しいこともあり、優秀な高度専門人材については、SOMPOホールディングスでも集中的に採用し、グループ各社に高度なサービスという形で提供する仕組みをとっています。グループ各社からは「こうした体制でなければいまのようにはセキュリティ対策を進められなかった」といった評価も受けています。
喜多村 直己氏(リスク&ガバナンスユニット リーダー)
SOMPOホールディングスで高度な専門性を持つ人材を採用するために、どのような工夫をしているのでしょうか。
岡田氏:
私たちの活動やブランドについて説明する「人材採用パンフレット」を作成し、採用エージェントに配布しています。このパンフレットには「”安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会の実現」という当グループのパーパスや、そのパーパスの実現にIT部門としてどう貢献しようとしているのか、さらに現役社員の生の声や職場環境についても掲載しています。特に、今年度できたばかりの「サイバーラボ(専用ルーム)」があること、資格取得のための補助制度が整っていることは、応募を考えている方に魅力を感じていただいているようです。
セキュリティ組織の専門ルーム「サイバーラボ」
採用形態はジョブ型であり、新卒採用は現時点では行っていません。応募者にはジョブディスクリプションを示し、最終的には私たちのパーパスと、応募者自身の目標・やりたいことが合致しているかが採用に結び付くかどうかのポイントになります。
こうした流れを経て入社したスタッフからは、「サイバー領域がスタートアップのようで楽しく感じる」「自由な雰囲気があって、ボトムアップで意見しやすい」などの声があがっています。
SOMPOホールディングスにおけるジョブ型制度の考え方
李氏:
私が所属するサイバー・テック・ユニットでは、取り組むべきセキュリティ対策に優先度や目標を設定して、必要な人材を国内外から集めています。採用にあたっては、「自分とってWinか」「組織にWinだと思うか」という両方の質問への答えがYesになることを重視しています。採用後は、ここでの仕事が1人ひとりのモチベーションにつながるよう、こまめにコミュニケーションをとっています。
李 宏宇氏(サイバー・テック・ユニット リーダー)
喜多村氏:
李のサイバー・テック・ユニットで海外の人材を採用しているのは、特にセキュリティテストやペネトレーションテスト(侵入テスト)などの領域では、話す言語にかかわらず専門性を発揮してもらえることが1つの理由です。それぞれの専門領域を意識しながら、チームを編成しています。
堀米氏:
入社後のOJTはユニットごとに実施します。私のいるプロダクティブ・ソリューション・ユニットはグループ各社とやりとりするプロジェクトが多いので、最初はチームメンバーが伴走しながらプロジェクトや相手担当者の特色を理解してもらい、いずれ独り立ち、という形で進めています。また当社での仕事を好きになってもらいたいので、本人にやりたいことがあれば、ほかのユニットと調整して、新しいプロジェクトをつくることもあります。
堀米 賢司氏(プロダクティブ・ソリューション・ユニット リーダー)
ジョブ型雇用における、人事評価の方法について教えてください。
喜多村氏:
ジョブディスクリプションで設定した目標に対する達成度と成果(アウトプット)を、年初・期中・年末にレビューして評価しています。
達成度や成果を高めるためにどういう仕事の進め方をすれば効率的・効果的か、たとえば在宅か出社か、またどんな時間帯に仕事をするのかなどは、マネージャーと相談したうえで、あとは自己管理としています。結果に対する責任が求められる一方で、自由度は高い環境といえます。
グループ会社の担当者に向けた教育活動に注力
現在、IT企画部として特に注力している取組みはありますか。
岡田氏:
セキュリティ面の技術的な施策はもちろんですが、グループ各社のIT担当者、セキュリティ担当者の教育にも力を入れています。たとえば、サイバー・コントロール・ユニットとサイバー・テック・ユニットのエンジニアによる「サイバーテックトーク」という研修を毎月開催しています。「セキュリティの基礎」をはじめ、「AIの動向」「DDoS攻撃の仕組み」など、概要は理解していても詳細までは説明できないというようなテーマを取り上げ、デモなども行いながら理解を深めてもらうというものです。こうした活動を通して、ナレッジの共有はずいぶん進んだと思っています。
岡田 博子氏(サイバー・コントロール・ユニット リーダー)
李氏:
サイバー・テック・ユニットではユニット内のワークショップも開催しています。たとえば最近では、不正なコピーサイトを検知する技術をテーマに実施しました。当グループのビジネスですぐに用いることはない技術かもしれませんが、アイディアやノウハウのストックをつくっておくことは重要ですし、ワークショップはスタッフ各自の成長、ひいては組織としての成長にもつながるものだと考えています。
サイバー・テック・ユニットのワークショップの様子
CoEの名にふさわしい専門性を維持し、グループ各社への価値提供を継続
今後の展望をお聞かせください。
喜多村氏:
リスク&ガバナンスユニットとしては、セキュリティはリスクマネジメントの問題だということを、今後もグループ全体に周知していきたいですね。セキュリティは「やらねばならない」「守らねばならない」といったように受動的な姿勢で捉えられがちですが、「どこまでリスクを受け入れるか」「どこまでやるか」という観点、つまり「自身の状態を知ってリスクをうまく管理する」という積極的なリスクマネジメントの発想が重要です。そうした考え方を、日々の教育やプログラムを通してグループ全体に浸透させられればと考えています。
堀米氏:
プロダクティブ・ソリューション・ユニットでは、セキュリティ関連の困りごとをグループ各社と一緒に解決し、本業の部分を推し進めていきます。また、いつか生じるであろう困りごとにも先回りできるよう、さまざまなノウハウをグループ各社に提供して、積極的に“地ならし”をしたいと思っています。
岡田氏:
サイバー・コントロール・ユニットは、セキュリティ人材採用への注力を通して、グループ会社へのサービス提供の強化に引き続き取り組んでいきます。いまは、グループ各社に必要なセキュリティ管理と、それに対する充足度の状況を可視化しているところです。その結果をもとに、今後SOMPOホールディングスとしてどのような施策が価値提供につながるのかを含めて検討していきます。
李氏:
サイバー・テック・ユニットは、グローバル視点で脆弱性があるポイントを見出すと同時に、テクノロジーのエンジンとして、最新技術をどう取り入れていけるかを追究していきます。
喜多村氏:
ユニットそれぞれの展望はありますが、まずはCoE体制を継続していくことが重要です。CoEの名に恥じない専門性と、要員の維持、グループ各社への価値提供を継続していきたいと思います。そのためにはセキュリティに関する技術はもちろん、AIやブロックチェーン、量子技術などについても、特定のメンバーだけでなくマネジメント側も含めて勉強していく必要があると感じています。
また、当グループでは、サイバー保険の引き受けやインシデント対応支援、セキュリティ診断の提供といったお客様向けのサイバーセキュリティ関連サービスも展開しています。これらサービスに私たちSOMPOホールディングスが持つナレッジも反映していくことで、世の中の人々にサイバーセキュリティの技術を届け、最終的には「”安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会の実現」という当グループのパーパスを体現していければと思っています。
前後編にわたり、ありがとうございました。
(取材・文:渡邊智則、写真:岩田伸久)