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【セミナーレポート】DX推進で、なぜ『人や組織』が動かないのか?エン・ジャパン実践事例に学ぶ、人と組織の動かし方

2024年6月27日、エン・ジャパン株式会社(以下、エン・ジャパン)のDX推進グループマネージャーである高橋淳也氏が、「DX推進でなぜ人や組織が動かないのか」というテーマで講演を行いました。

高橋氏は2006年にエン・ジャパンに入社し、10年間コピーライターを務めた後、企画職としてDX推進や組織作りに携わってきた経歴を持ちます。

この記事のポイント


  • エン・ジャパンでは、リーマン・ショックによる危機を脱するため、事業部長が2014年以降「5年で売上を4倍にする」と売上目標を設定。目標達成のために、様々なDXツールの活用を進めた

  • 高橋氏は「DXは人と組織の変革が必要」という考えを基に、「パワーの源泉」「影響力モデル」といった社会心理学の考え方を活用しながら実践的なアプローチを行った

  • 「DXは便利なツールを入れれば勝手に進むというのは、運動器具を買っただけでダイエットできると考えるようなもの」。DXの推進には、デジタルスキルと組織変革スキルが求められる

エン・ジャパンの実践事例 5年で売上4倍を実現するためのDX

講演の冒頭で、高橋氏はエン・ジャパンがDX推進に力を入れることになった背景を説明しました。2000年の設立以来、インターネットの普及とともに右肩上がりで成長してきた同社ですが、2009年のリーマン・ショックを機に業績が低迷したそうです。

この危機を脱するため、経営層を含めた事業部長が2014年以降「5年で売上を4倍にする」という高い目標を掲げました。この目標達成のために、DXの推進が不可欠という判断に至ります。

高橋氏は「この目標を達成するには、エンジニアだけでは足りないことは明らかでした」と述べ、様々なDXツールの活用を決定したといいます。結果として、DX人材も計画的に育成され、2020年には年間2万6,000時間の業務時間削減を達成しました。

続いて、エン・ジャパンの契約DX推進事例が紹介されました。同社は電子契約サービス「クラウドサイン」を段階的に導入し、現在では利用率97%に達しています。導入の過程は3段階に分けられます。「エン転職」の事業部の一部でトライアルを実施し、紙契約との併用期間を経て、新型コロナウイルス感染症の影響もあり全面展開に踏み切りました。新規事業であるHRプラットフォーム「engage(エンゲージ)」には最初からクラウドサインが組み込まれるまで活用は進みます。

クラウドサイン導入の成果として、契約プロセスのリードタイムが5営業日から1営業日に短縮されたことがあげられました。これにより、顧客の購買意欲が高いタイミングで契約を締結できるようになり、売上の向上にもつながったそうです。

トライアル導入での成果

人と組織の動かし方 なぜ動かないのか?そのメカニズムは?

高橋氏は「DXには人と組織の変革が必要」と主張します。単にデジタルツールを導入するだけでは変革は進まず、組織全体に働きかける必要があります。その際に障壁となるのが、部署間の調整と現場の抵抗感(=不安感)です。

部署間の調整については、「パワーの源泉」という社会心理学の概念を用いて説明されました。これによると、人に影響を与えるパワーの源泉には、正当性、報酬、強制、専門性、準拠(人間的魅力)の5つがあります。DXは部門横断プロジェクトであることが多いです。DX推進者は通常、正当性や報酬、強制といった「パワー」を持たないため、専門性と準拠で影響力を発揮する必要があります。

他部署(法務)との調整が難しい理由は?

高橋氏は部署間の調整を行う際に、「価値の交換」を重視したそうです。これは社会心理学者の研究による「影響力モデル(コーエンとブラッドフォード)」に基づくもので、「相手を味方と考える」「共通の目標を設定する」「相手の世界を理解する」といった6つの要素から成ります。

高橋氏はこのモデルを用いて、法務部門との調整を行いました。「企業としての業績向上」という事業部門と法務部門共通目標に立ち返り、リスクヘッジの重要性を理解しつつ、電子契約推進の意義を説明したのです。

現場の抵抗感については、「現状維持バイアス」という心理的傾向が原因と分析しました。これは変化を避けて現状を維持したいという人間の本能的な傾向で、「選択の麻痺」「損したくない」「過去の経験にとらわれる」といった形で現れます。

これを克服するため、高橋氏は段階的な導入や体験型の説明会を実施することで、安心感を醸成しました。具体的には、まず現状維持バイアスが比較的弱い組織でトライアルを始め、成功事例を作り、紙契約と電子契約の併用期間を設けることで、営業担当者の不安を軽減させました。さらに、体験型の説明会で営業担当者に顧客役と営業役の両方を体験させ、電子契約のメリットを実感させたのです。

高橋氏は「DXツールが便利だからすぐに組織が変わるというのは、運動器具を買っただけでダイエットできると考えるようなもの」と指摘し、DX推進には、デジタルスキルと組織変革スキルの両方が必要と強調しました。

デジタルスキルにはプログラミングやAI活用、ノーコードツールの活用などが含まれる一方、組織変革スキルには自社ビジネスの理解や、人と組織を動かす力が含まれるといいます。

DX推進で、なぜ『人や組織』が動かないのか?

最後に、エン・ジャパンが提供するDXリスキリングサービスについて紹介がありました。

高橋氏は「ITツール導入は手段だと本当の意味で理解できた」という顧客の声を引用し、組織変革スキルの重要性を改めて強調しました。

講演を通じて、高橋氏はDX推進における人的側面の重要性を繰り返し訴えました。デジタル技術の導入だけでなく、組織の文化や個人の心理に配慮した変革が必要という主張は、多くの企業が直面するDX推進の課題に対する示唆に富むものです。

DX推進に課題を感じる方に、視聴をおすすめします。

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