この記事のポイント
- OODAとは、現状の観察によって収集したデータにもとづいて短期で施策の実行にまでいたるフレームワークのこと
- 状況判断のステップでは、特に「自社にとって不都合なデータ」に着目することで、OODAループをとおして有効な成果が得られる可能性を高めることができる
- OODAループとPDCAサイクルの違いとして、OODAループは、観察した事実にもとづいて速やかに施策を実行することに向いている。一方、綿密な計画が求められる作業や、あらかじめ取り組みのゴールが明確な場合には、PDCAサイクルのフレームワークが向いている
OODAとは
OODA(ウーダ)は、ビジネスシーンで意思決定に用いられるフレームワークです。特に、変化や想定外の事態が起こりやすく不確実性が高い環境において有効であり、現状を観察したうえで方向性を決め、短期で施策の実行にいたるという一連の流れをたどります。
OODAは、以下の4つの英単語の頭文字からなります。
- Observe(観察)
- Orient(状況判断、方向付け)
- Decide(方針・意思決定)
- Act(実行)
OODAに取り組むうえでは、「Observe(観察)」から始まる4つのステップを順番に進め、再び「Observe(観察)」に戻るサイクルを繰り返します。この一連の流れをOODAループと呼びます。
OODAループが注目される理由
OODAループは、世の中の不確実性の高まりや、ビジネスモデルの大きな転換などをきっかけとして注目を集めています。そうした環境では、企業はより迅速にビジネス環境の動向を察知し、スピーディかつ柔軟に対応することが求められます。そこで、不確実な環境下でも、状況判断から施策の実行まで、迅速な対応を可能にする「OODAループ」のフレームワークに関心が集まっているのです。
企業のセキュリティ対応とOODA
OODAループが役立てられやすい領域の1つが、セキュリティ分野です。
特にサイバーセキュリティに関する問題は予測が難しく、臨機応変な対応が求められます。OODAのフレームワークは、想定外の状況や変化に対する、即応的かつ柔軟な対策を実現することから、リスクマネジメントやインシデント処理をはじめとした企業のセキュリティ対応に適しています。OODAをセキュリティ活動にとりいれることで、有事の際のサイバーレジリエンスの向上が期待できるでしょう。
OODAループの4ステップと具体例
ここからはOODAループの4つのステップについて、具体例とともに解説します。
Observe(観察)
OODAのファーストステップ「Observe(観察)」では、自社や各部署の現状、ビジネスを取り巻く環境を観察し、状況判断のもととなるデータを収集します。
変化が著しい現代では、企業やビジネスを取り巻く環境が数日のあいだに一変してしまうことも少なくありません。そうした変化にいち早く気づいて対応するためにも、自社内はもちろん、世相や市場動向、顧客ニーズなどを多角的にモニタリングして情報を収集するのがこのステップです。
- 社内のシステムやネットワーク、サービス等の現状、および問題の発生状況を観察する
- 最新のセキュリティインシデントのトレンドや傾向を把握する
- OODAループ2周目以降では、1回目のループで行った対策の効果や実行後の状況等を観察する
Orient(状況判断、方向付け)
「Orient(状況判断、方向付け)」では、1つ目のステップで収集したデータにもとづいて自社がとるべき対策の方向性を決定します。特に「自社の現状」と「あるべき姿」とのギャップを示すような「自社にとって不都合なデータ」に着目することで、OODAループをとおして有効な成果が得られる可能性を高めることができるでしょう。
またこの状況判断のステップは、時間をかけずに行うことが重要です。1つ目のステップで観察した環境が大きく変化してしまう前に、素早く状況判断を行いましょう。
- 把握した問題の状況や内容にもとづき、緊急性や影響範囲の判断、トリアージ等を実施する
Decide(方針・意思決定)
「Decide(方針・意思決定)」のステップでは、前のステップで決定した方向性に沿って具体的な実行方法を策定します。状況判断から意思決定のステップの過程についても慎重になりすぎず「迅速な意思決定を可能にする」というOODAの特性を活かすことを意識してスピーディに進めるとよいでしょう。さらに検討した実行方法については、現実的に遂行できるものであるかを確認しましょう。
また、「Orient(状況判断、方向付け)」を行った段階で、具体的にとるべき行動が暗黙的に見出されることも多いでしょう。その場合には、この「Decide(方針・意思決定)」のステップを飛ばして、迅速に「Act(実行)」に進みましょう。
出所:チェット リチャーズ・著、原田 勉・訳/解説「OODA LOOP(ウーダループ) 次世代の最強組織に進化する意思決定スキル」(東洋経済新報社、2019年)112頁 をもとに編集部作成
- 問題の緊急性や影響範囲、対応の優先順位等に応じた具体的な対策の工程を定める
Act(実行)
「Act(実行)」のステップでは、前のステップで決定した施策を実行します。実行に移すことで新たな課題を発見した場合は、1つ目のステップに戻って再びOODAループを回しましょう。
- 「Decide(方針・意思決定)」のステップで定めた方針や対策を遂行する
OODAループとPDCAサイクルの違い
OODA(ループ)と比較されることが多いフレームワークとして「PDCA(サイクル)」があげられます。
PDCA(サイクル)は、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の4つのステップを繰り返し、計画的かつ中長期的な改善を図ることに向いたフレームワークです。一方、OODAは不確実性が高い環境において、事実の観察によって収集したデータもとづき短期で実行にまでいたるためのフレームワークです。
OODAループとPDCAサイクルの主な違いは以下のとおりです。
| PDCAサイクル | OODAループ | |
|---|---|---|
| 不確実性 | 低い | 高い |
| 命令のタイプ | タスク型命令 | ミッション型命令 |
| タスク | 反復的 | 創発的 |
| 対応の重点 | 事前対応 | 事後対応 |
| データ | 予測データ | 事実データ |
| 専門性・特殊性の要求 | 低 | 高 |
| 行動に関する判断 | 上位判断 | 現場判断 |
出所:チェット リチャーズ・著、原田 勉・訳/解説「OODA LOOP(ウーダループ) 次世代の最強組織に進化する意思決定スキル」(東洋経済新報社、2019年)328頁
このように両者は対照的なフレームワークであるといえます。それぞれの性質を理解したうえで目的によって使いわけたり、補完的に活用することが重要です。
出所:情報通信審議会 情報通信技術分科会 IPネットワーク設備委員会 事故報告・検証制度等タスクフォース「情報通信審議会 情報通信技術分科会 IPネットワーク設備委員会 事故報告・検証制度等タスクフォース 中間報告」(令和3年6月)17頁 をもとに編集部作成
OODAループのメリット・デメリット
ここまで解説したOODAループの特徴を踏まえ、企業がOODAループを取り入れるメリットとデメリットを紹介します。
OODAループのメリット
まずOODAループを取り入れるメリットとして、下記のような効果が期待できます。
- 不確実性が高い環境下であっても、とるべき施策を判断することができる
- スピーディな対策を実現できる
OODAループは、環境の不確実性が高かったりデータが乏しいなかでも、事実の観察にもとづいて方針を策定することで、速やかに施策の実行にいたることができるのが大きなメリットです。
また、OODAループを迅速に回し、実行を積み重ねていくことで、徐々に不確実性を低減していくことができるでしょう。
OODAループのデメリット
OODAループを取り入れるデメリットや、活用に向かない場面としては下記があげられます。
- リソースの浪費につながる可能性がある
- 定型業務の改善には効果を発揮しにくい
OODAループは、観察した事実にもとづく施策を速やかに実行することに向いている一方、綿密な計画が求められる作業には不向きだといえます。
たとえば、企業の財務管理にOODAを取り入れると、大きな浪費につながってしまう可能性があるでしょう。計画的にリソースの配分を行う業務などでは、PDCAサイクルを活用したほうが有効なことが多いと考えられます。
また定型化されている業務の改善など、達成したい目標があらかじめ明確になっていたり、参考となるデータが潤沢にある場合も、PDCAサイクルを活用することが向いているといえます。
まとめ
近年、注目を集めているOODAループについて、その概要や活用によるメリット、PDCAサイクルとの違いなどについて解説しました。
OODAループは、自社の課題を迅速に解決へと導くフレームワークです。日ごろからOODAループを取り入れることで、現代社会の著しい変化に対応していきましょう。
この記事で解説したOODA(ループ)のポイントは下記のとおりです。
- OODAとは、現状の観察によって収集したデータにもとづいて短期で施策の実行にまでいたるフレームワークのこと
- 状況判断のステップでは、特に「自社にとって不都合なデータ」に着目することで、OODAループをとおして有効な成果が得られる可能性を高めることができる
- OODAループとPDCAサイクルの違いとして、OODAループは、観察した事実にもとづいて速やかに施策を実行することに向いている。一方、綿密な計画が求められる作業や、あらかじめ取り組みのゴールが明確な場合には、PDCAサイクルのフレームワークが向いている
参考資料
- 情報通信審議会 情報通信技術分科会 IPネットワーク設備委員会 事故報告・検証制度等タスクフォース「情報通信審議会 情報通信技術分科会 IPネットワーク設備委員会 事故報告・検証制度等タスクフォース 中間報告」(2021年6月)
- チェット リチャーズ・著、原田 勉・訳/解説「OODA LOOP(ウーダループ) 次世代の最強組織に進化する意思決定スキル」(東洋経済新報社、2019年)
